どうぶつたちの病院沖縄について

交通事故のイリオモテヤマネコを治療・放獣しました

2014年9月26日 09:28

 8月26日夜中1時半ごろ、イリオモテヤマネコの仔猫を救護したという電話で目が覚めました。私はすぐに西表野生生物保護センターへ駆けつけ、検査・治療を開始しました。

生後4~5か月ほどの仔猫で、意識ははっきりしていましたが、瞳孔不対称(左右の瞳孔のサイズが違う)、呼吸異常がみられました。血液検査の結果と、道路中央で倒れていたという救護時の状況から、交通事故に遭ってしまったと考えられました。
 イリオモテヤマネコが交通事故に遭った場合、これまでのケースでは多くが即死か、深手を負っても命からがらジャングルへ逃げてしまうため、生きて救護されることはとても稀なことです。

ヤマネコ救護_1.jpg
瞳孔の左右不対称があることから、頭部を強く打ったことにより、頭蓋骨の中で出血・腫れや神経の異常が起こっていると考えられました。
交通事故や落下の場合、時間が経過してから症状が重篤化することもあり、予断を許さない緊張の数日間でした。
ヤマネコ救護_2.jpg
幸いなことに治療への反応は良好で、異常のあった呼吸や瞳孔も正常になり、日々着実に状態は改善していきました。


9月3日、治療とリハビリを終了し、いよいよ放獣する日を迎えました。
ケージを開けると、振り返ることもなくまっすぐに西表のジャングルへ帰っていきました。
現在は西表野生生物保護センターによって追跡調査が行われています。

イリオモテヤマネコは西表島にだけ生息し、その数は100頭前後といわれ絶滅が危惧されています。
今回のイリオモテヤマネコは、幸いにも野生復帰することができました。これは、交通事故で救護されたイリオモテヤマネコでは、統計を取り始めた1978年以来初めての事例となりました。

西表島にはイリオモテヤマネコのほかにも多種多様な生物が生息しています。
交通事故に遭うのもイリオモテヤマネコだけではありません。
スピードを落として運転すること、それは人間と野生動物が同じ島で生きていくために、私たちが出来ることの一つではないでしょうか。

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